最近の取材では、ひたすら地方めぐりをしている。
飛行機に乗ったり、電車にゆられたり、はたまたうらびれた漁港から船に乗って離島を
訪れたり…
体はくたくたに疲れるし、取材をメモに起こす作業も膨大でうっとおしいのだけど、
でも、とっても楽しい。
東京から何百キロも離れた田舎の山の中や、海の向こうの北風にさらされる孤島や、
雪に埋もれた地方都市に住む人々の話は面白い。苦労の大きさに思わず頭が下がったり、
喜びの荒々しさに、思わず引き込まれて前のめりになったりすることばかりだ。
なんでだろう。
ありきたりの想像なのかもしれないけれど、生の現実と格闘する人々だからなのかな、と
思う。東京にいると、特に六本木や霞ヶ関や銀座や大手町にいると、現実がちょっと遠い。
統計の数字やパワーポイントの図表の向こうに現実が座っている世界。
その分、東京では、地方ではありえないような広い広い世界観を獲得できるというのも事実
なんだけど…
今日、東北からの帰りの新幹線の中で読んでいた小説はハックスリーの「すばらしい新
世界」。この中で逆説的に描かれている「ユートピア」の雰囲気が、東京の風景に少し、
重なる気がした。