人生の半分くらいの時間は、何かを探しているような気がする…
と、言うとちょっとカッコイイけれど、文字どおり私はよく落とし物やなくし物をする。予備校生の時はあまりに落とし物窓口に行くので、担当の事務のお姉さんに「また来たの?」と呆れられるくらい。東京で働いていたときは、家のカギをよく会社の机に置きっぱなしにしたまま帰宅して、仕方なく近所のカプセルホテルに泊ったことは数知れない。
こっちに転勤してきてから約2か月。しばらく「症状」は収まっていたと思っていたのだが、またやっちまった…。
仕事を終え、「今日はけっこういい仕事ができた」と上機嫌なまま行き着けのバーで飲み、そのままてくてく歩いて帰宅したのは午前1時前。ポケットを探るとカギがない。いくら探してもない。そこらへんに鞄を広げて何度みてもどこにもない…
結局その日は、会社まで引き返して会社に泊った。
ここまでならばまあ私にとって、それほど珍しいことではない(それもどうかと思うけれど)。
問題は次の日。
不動産会社とカギ屋さんを散々慌てさせた末に二日ぶりに帰宅した私は、さすがにくたびれて、仕方がないのでちょっとおいしいご飯を食べて元気をつけようと思い付いた。
「うん、こういうときはうまい飯に限る」
すでに日が暮れかけていて、簡単な荷物だけを持って家を出る。
徒歩で歩くこと数分、ふと携帯電話をみると、いつも付けているお気に入りのストラップが見当たらないのだ。「……」。実はこのストラップ、前にも買った直後になくして、購入したのは二度目のもの。「またなのか?」。さすがにため息が出た。
仕方なく今来た道をくるりと引き返し、歩道に落ちていないか確認しながら自宅までの道を辿る。歩いているうちに段々情けない気分になってきた。私はいったい何をしているのか…。結局、家の前まで戻ってきてしまい、その頃には自分で自分のことがほとほといやになってきた。こういう時の最後の手段はタバコである。
胸のポケットからタバコを出し、ライターで火をつけて…。…????
「今度はライターがない」。もう泣きそうな気分。
結局、ストラップは自宅のベッド脇に落ちていたのだが、自分のことをすっかり信用できなくなってしまった。とりあえず家のカギはもう二度となくすまいと決心した。
というわけで、今私は会社のIDホルダーをぶらさげるためのゴムひもを使い、カギを首からぶら下げている。かなり情けないものがあるけど、仕方ない。
とりあえず交通事故とかには絶対に遭わないようにしなくてはと堅く心に誓っている。
カギをぶらさげた状態で発見されるサラリーマンって…恥ずかしすぎる…