今朝の朝刊で久々に自分の名前が載ったので、実家に電話をかけた。
実家に伝えると、自動的に福井の祖母のところに連絡が行き、祖母が非常に喜ぶのだ。
もちろん両親も喜ぶのだけども、ここ数年はそういった用事で電話をしても必ず避けては
通れないめんどくさい会話をしなくてはならない。
今回はどうやって、かわそうか…気が重いなあ。
「もしもし」と出た声は父。ああ、最悪だ。
「ああ、俺。みんな元気?えーっと今日の…」
「朝刊見たよ。お母さんにも教えてあげた」
「そうか、そりゃ良かった。じゃあ…」
とそそくさと切ろうとする私を父はすかさず止める。
「今度、転勤だろう。引越し先は決まったのか?」
「いや、まだだけど、できれば神戸に近いとこに住もうと思っているよ。決まったら連絡する。
じゃあ…」
「誰か連れてく人はいないのか?」。でた、結婚話。
「うーん…」
「お前の人生だけども、そろそろじゃないか」
「いや、ほら…俺にもいろいろあるんだよ」
「周りでも一人ものはお前くらいだろう」
「そんなことないって」
「結婚は早いほうがいいぞ」
「そんなこと言ったって仕方ないじゃないか。まあ、そのうち…」
「仕方なくない。手立てはいくらだってある。見合いとかでもいいし、大学時代に世話になっ
た先生に紹介してもらうとか…」
うちではなぜか、父親が結婚推進派の急先鋒である。少し前までは母親だったのだが、
どうやら彼女は悟りの境地に達したらしく、「あんたがいいと思ったときでいいよ」としか
言わない。
父親には「俺も別に何もないというわけじゃないから安心してくれ。だが気長にまってくれ」
と答えにもならないセリフで強引に納得させて、なんとか電話を切った。
しかし、去年よりも父親の態度のトーンがずっと強まっている。
すかさず私は弟の携帯を鳴らした。
「もしもし。俺だけど、今、実家?」
「うん。どうしたの?」
「たった今、父さんと話をしたんだけど、なんか前よりもずっと結婚プレッシャーがすごく
なってるぞ」
「やっぱり孫の顔がみたくなったのかなあ」
「ちょっとお前何とかしろよ。順番は譲ってやるから、早く結婚して父さんを安心させてくれ」
「そんなこと言われてもなあ」
「油断してると勝手に見合いとか組まれそうな勢いなんだよ」
「今、実家をリフォーム中だから父さんも母さんも忙しいはずなんだけど、それにもかかわら
ず結婚話に熱中するってことは相当だよね。リフォーム終わったらもっとすごくなるかもね」
「脅かすなよ、お前…」
とにかく、これでますます実家から足が遠のきそうだ。
それにしても、女の子だったらまだしも、息子の結婚を強烈に迫ってくる父親って世の中に
多いのだろうか。うちの父親が変わっているのか。
ペットでも飼って気を紛らわせてくれないかと願うばかりの日々である。