酔っぱらった勢いで久しぶりに電話した、フリーカメラマンのWさん。
2年前にバグダッドで知り合った、凄く素敵な人だ。掛け値なしに、今、日本で三本指に入るであろう、実力と根性と良心を持ったカメラマン。
「来週からイラク入りをチャレンジしようと思います」と彼は話した。Wさんは、二つ年下の僕にも、決して敬語を崩さない驚くほど腰の低い人でもあるのだ。でも、その一方で、「世界のニュースソースの一端は、俺自身が握っているのだ」という強烈なプライドと自負を秘めている人でもある。そこが僕は大好きで、憧れるところでもある。
2年前、僕を含め、バグダッドの地を訪れたほぼすべてのジャーナリストが予感したとおり、今のイラクは混迷の極みにある。その中でも今のイラクを見つめに、改めて彼の地に帰れる立場にある人はほんの一握り。だからこそWさんには、今度の仕事をがんばってほしい。
たぶん、これから2−3週間の間に週刊誌か月刊誌かあるいは新聞の片隅に載るイラクの写真のキャプションで、「W」のイニシャルがあるとすれば、確実に彼だと思う。
もしも幸運にも、その写真に出会えるとしたら、「ああ、これが今のイラクの今なんだ」と思ってほしい。たとえそれが、あなたの今までの先入観から180度違ったものだとしても、おそらくその写真が真実。それくらいちゃんとしたジャーナリストです。彼は。
……でも、そんなすごい人で、しかも見た目だったとてもかっこいいのに、なぜかWさんは女性に縁がない。いつも「彼女がいない」としょんぼりしている。だから今度、会ったときには全力を尽くして美人を紹介して差し上げようっと。